心理的安全性や情熱と批判(あるいは被害妄想)と語調の話

updated: 2021-05-29

心理的安全性

心理的安全性という考えがある。 行動・発言をすることによって他のチームメンバーから何らかの害を与えられたりはしない、と確信できる性質のことである。

心理的安全性が高ければ、議論が活発になりチームメンバーが積極的に行動できるようになると考えられている。

心理的安全性についての解説は書かないので適当なページを参考にしてほしい。

「心理的安全性」とは何か? チームや職場へのメリットを紹介 | 人事のプロを支援するHRプロ

心理的安全性を低下させる方法

さて、心理的安全性は高い方が良いと言われているので、どうすれば心理的安全性を高められるかを考えたい。

まず、逆に、おおむねどのようなチームでも共通して心理的安全性を低下させる言動を列挙してから、心理的安全性を低下させると判断した理由を述べ、最後に避ける言い換えを考えようと思う。

よく耳にする言葉を並べているので、ソフトウェアエンジニア寄りの語彙である可能性には留意してほしい。

心理的に危険な語彙

  • 大声で指示する
  • 「○○くらいはしてほしい」
  • 成果物に対し「全然ダメ」「クソコード」と言う
  • 「○○では?」
  • 「普通に~~したらいい」
  • 「でもそれって、~~だよね」と否定的な意見を述べる
  • 「~~だと思うけど」

心理的に危険な語彙の解説

大声で指示する

大声を出された側は、内容に関わらず声量だけで攻撃されていると感じるものだ。

称賛の時だけは大声を出して良い。抽選やクレーンゲームで大当たりを出した時に胴元が騒がしく祝っている様を想像してほしい、あれは称賛された人が「大げさだな」とは思いつつも嬉しく感じるし、それを見ている第三者にもモチベーションを与える行為である。

「○○くらいはしてほしい」

「○○くらい」という発言は、「○○というのは充分に低レベルなことである」というニュアンスを感じさせる。 そして、「してほしい」という表現が過去に行われなかった事に対して使われなかったことに対する叱責を感じさせる言動だと考える。

成果物に対し「全然ダメ」「クソコード」と言う

「ダメ」と言うからには改善点が分かっているはずだけれど、改善点を伝えるわけではなくただ単に「だめ」と伝えて徒労感を与える。

「○○では?」

指摘者は、「○○をすればいいかもしれないね」程度のやさしい気持ちかもしれないが、被指摘者は「○○すれば解決するのお前はそれをサボった、バカ」程度の受け取り方をする。

「普通に~~したらいい」

指摘者は、「“いつもどおり” ○○をすればいいと思うよ~」程度のやさしい気持ちかもしれないが、被指摘者は “いつもどおり” を分かってないから訊いたので、それをあたかも常識であるかのように振る舞うのはマウンティングの一種であるととれる。

「でもそれって、~~だよね」と否定的な意見を述べる

指摘者は、改善の方針が分かっていて、改善の方針を述べずに至らない点を列挙している。 要するに、「お前の案はだめ」と言っているのとほぼ同等である。

「~~だと思うけど」

「~~だと思うしそれをやるのが常識だと思うけど、なんでお前はそれをやってないの? サボったの? バカ?」程度の受け取り方をされると考えたほうがよい。

被害妄想について補足

これまで列挙した項目は、被害妄想にとらわれている人間が書いている可能性がある、ということにも留意してほしい。 つまり、これらを闇雲に避けようとすると、避けようとしている者自身が疑心暗鬼になり自由に発言できなくて心理的安全性を損なってしまうかもしれないということである。

このページのタイトルに被害妄想と書いている理由は、誰かが被害妄想気味になる要因があるという時点で心理的安全性は高くないということに留意したいからである。

危険な語彙の言い換え

大声で指示する

大声を出す必要はない。大声を出さず、達成してほしいこと・実行してほしいことを静かに明確に繰り返しなさい。

「○○くらいはしてほしい」

「○○するともっと良くなる」と言いなさい。

現状では実行されていないが実行してほしいこと(○○)があることは理解した。 どういう言い方をするかは自由だが、とにかく○○を実行してほしいなら褒めつつ誘導しなさい。

成果物に対し「全然ダメ」「クソコード」と言う

改善点を伝えなさい。

「ダメ」ですらなく「全然ダメ」と強く否定するからにはそれだけの理由がわかっているはずである。 それだけの理由がわかっているのに、その理由と改善方法を伝えないのは不親切ではないか?

また、被指摘者に改善点がわからず苦しむ時間を味わってほしいという場合を除いて、改善点を伝えて改善してもらうほうが時間も精神的消費も少ないものである。

「○○では?」

「○○すると解決するかもしれない」と言いなさい。

被指摘者は、指摘者よりも知識が不足しているかもしれないことを念頭に置き、指摘者にとっての常識は被指摘者にとって新しい知識であるかもしれないと意識しなさい。 また、自分が相手に新しい知識を与えられることを喜びとしなさい。

「普通に~~したらいい」

同上。

「でもそれって、~~だよね」と否定的な意見を述べる

同上。

「~~だと思うけど」

同上。

まとめ

「△△できるのは良いね! ○○すればもっと良くなるかも」と言えばよい。

人の行動をマネジメントするとどうしても叱りたくなるものではある。これは「平均への回帰・行動経済学の強化効果」として別の機会に書きたい。